ウルトラマラソンに初めて触れた①【第26回チャレンジ磐梯吾妻スカイライン】当日~15kmぐらいまで

第0関門突破できず

5/28、深夜2時30分。起床。睡眠時間約1時間半。

良く起きれたもんだ。睡眠には浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)があって、周期的にその二つを繰り返しながら眠っているらしい。見事にいい周期のところで目覚めれたか。寝起きはそれほど悪く、というか、寝れたのかどうかも分からないぐらいの感じではあった。

まあ、当初の不安は的中。見事に第0関門通過できずにこういう事態になったわけで。前日の宴が例年よりそれそれは盛り上がった会になり、自分もとても楽しかったし、今年一年の占う上でこの雰囲気がとても重要であると考えたら、すみません一次会でドロンです、などということは立場上でもこの楽しい気分上でもそれは有り得ないことだった。さすがに終盤まで飲み続けることは危険行為であるし、途中からはアルコールを入れずに時間を過ごした。帰宅午前0時半。これはさすがにどうよって時間だが、帰宅後の動きはとにかく素早く、30分で諸々済ませ床についた。そして、うまいことレム睡眠中にスパッと起きた。

 

会場へ

朝起きてからの動きも早い。準備はすべて済ませてある。会場まで早朝のこの時間なら15分ぐらいで着ける。3時半過ぎ、寝ていた妻を起こし送迎してもらう(申し訳ない)。家を出て、コンビニで朝食とエナジージェルを購入し、会場までの間食す。昨晩の楽しかったけれども少し後悔の残る宴を思い出しながら、はたまた天気はよさそうだなあなどとふわふわした心持ちの中、おもむろにジェルを取り出し蓋をあける。どれチャージするかとジェルのキャップのところを前歯で少し強めにかんだ瞬間、

 

パキっ。

 

ん?!なんか欠けた。とっさに前歯だと確信する。以前に経験したことがある。

恐る恐るバックミラーに歯をうつすと見事に前歯の先端が欠けている。もう、なんてこった。初のウルトラだというのに。幸い欠けの範囲は小さく、欠けてるでしょと言わなければ気づかない程度のものではあるが、そうは言っても見事に欠けており、なんか不吉な予感を感じるとともに、本日初のウルトラの舞台に水を差されたようで少し落ち込んだ。妻は笑っているかと思いきや真顔だった。

そうこうしているうちに会場駐車場着。

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もうすでに会場は賑わっているものの、参加者数約200名なのでとてもアットホームな雰囲気が流れている。

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すぐ走れる格好に着替え、トイレも済ませ開会式。開会式では遠方から来て当日誕生日だった参加者に献上桃がプレゼントされた。県北の伊達地方の桃は有名。桃の名前がついたマラソン100撰に入っている大会もある。とてもやさしい雰囲気だ。

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スタート会場からこれから目指す浄土平、吾妻小富士を眺める(写真中央小さい富士山のような山)。下界は晴れ間が出ているものの、山の方は少し黒い雲があるようだ。とりあえず山は見えているし、暑すぎずにいい感じじゃなかろうかと思った。この時点では。実際にそんなに山は甘くなかった。

 

いよいよ初ウルトラスタート!からの遠方から来たレジェンド。

会場についてから約1時間。朝の5時、スタートの号砲!

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いつものマラソン大会の時のような高揚感はそれほどない。超地元ということもあるが、老若男女それぞれの参加者たちとともに、一緒に頑張ろうね感が出ていたと思う。これから世間一般ではバカと言われるぐらいのことをやろうとしている。みんな同じそのバカなことへのチャレンジをしようとしている同志。勝手にそんなことを想像しながら走り始めたのであった。

 スタートしてからはゆったりとしたペースで走りはじめる。先頭集団はすっと先の方まで進んではいるが、ほとんどの人がキロ6分ぐらいのペースで進む。

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3、4km過ぎたところで先ほどの開会式でお祝いをされた参加者の方と並走した。ちょっと聞き取れなかったのだが、飛行機でないと来れないとこにお住まいらしい。御年67歳(これも聞き間違えてるかも)、往年の宗茂のような雰囲気の方。

私「お誕生日おめでとうございます。」

宗茂(仮)「よくあんな感じで表彰されることが多いんですよー。」

私「そうなんですねー。あ、挨拶のとき家族には絶対に内緒にしてくださいって言ってましたね。」

宗茂(仮)「そうなんです。家族には内緒にしていないと参加できないので。ずっと前からマラソン大会出てますがね、私がこんな感じで大会に出ているとは知らないはずです。少し若い時は仕事で出張が多かったので、出張だと行って出てました。」

私「すごいっすね(笑)」

宗茂(仮)「私はポリシー的に同じ大会には二度は出ないようにしていて、、、。」

(その気持ち少し分かる。)

宗茂(仮)「ほら、今回の大会の案内が来た封筒。あれ小さかったでしょ。あのサイズばれなくていいんですよ(笑)大きい大会のは封筒が大きいので目立つから、ばれないかいつも不安なんです。」

私「確かに(笑)」

宗茂(仮)「あ、並走するとあれですね。私はゆっくり行きますから、お先どうぞ。」

人生いろいろ。今日集まった人々も、それぞれの生活がある中で、いろんな思いで参加されているんだろうなあと思った。今までのハーフやフルにはない感覚だ。お先どうぞと言われ先に進んだが、浄土平のエイド(上り終了の中間地点)で見かけた。あれいつの間に抜かれたろうか。

 

上りとご対面

スタートしてから約7kmは緩い下り。その後高湯街道に入るといよいよ上りだ。小さい時から知っている道。

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上りが始まると集団がばらけ、各々のペースに。分かってはいたが実際走るとやっぱり辛い。傾斜もそこそこ。なんとかできるだけ歩かないように行けるところまでいくぞとは思った。ペースはグッと落ちたが、上りはじめて3kmぐらいまではキロ8分を越えずに走れていた。前を見れば上り坂。坂。坂。坂。知っていたけれども。

 

新緑の匂い

嗅ぎ駆け上がるも

ここは激坂

 

10km過ぎたところで、メンタル的にはそこそこやられ始めている。まだゴールまで6分の1、上りが終わるまであと20km。どうして新緑の風が気持ちいいなどとのたまえるものか。無理はしていないのにどんどん、少しづつ辛くなってきている。多少の坂で平らなところを走らせてよなんて言っていた自分が馬鹿みたい。

tomsai.hatenablog.com

この程度でブーブー言いやがって。この坂を見てみろってあの頃の自分に言いたい、そして殴りたい。

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12km過ぎると高湯の温泉郷。走っていてもだんだん硫黄の匂いがしてきた。ここの温泉は小さい頃から良く来ている。そういえば、このコースは3つの温泉郷を通る。温泉好きにはなかなかのコースではなかろうか。

上りはじめて5km、ペースもキロ8を超えた。周りの参加者はほぼ歩いている。なんとか歩かないようにと自分なりに頑張ったが、傾斜が瞬間的にきつくなるところとかは、もう歩いている人とほぼ同じペースでしか走れなった。が、自分の中では遅くてもいい、走れるなら少しでも走ろうと決めていたから、俺は走るぜと腕を振った。すごい遅いけど。今考えるとそれが良くなかったとも思う。自分の実力からいったら、無理して走るぐらいなら歩く選択の方が良かったのだ。歩いても制限時間まではまだまだ余裕がある。頑張った代償なのか、なんなのか。14km過ぎ、足に異変が。

 Tabioのせいじゃないけれど

共同浴場あったか湯エイドで補給。止まったところで足裏に違和感。この時点ではそれはまだ小さかった。あったか湯を過ぎて花月グランドホテル(日帰り入浴におすすめ)を横目にいよいよ磐梯吾妻スカイラインに突入したころ、いよいよその痛みが本格的になってきてしまった。特に左足の痛みが強かったが、両方の足裏がなんか強烈に張ったような感じになってきたのだ。特にこのあたりはつづら折りの曲りなどもあり傾斜がきついところもある。上りはもう走れなくなっていた。すこし傾斜が緩くなったところで走りはじめようとするが、足裏がガチガチで走れない。

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赤丸のところ。めちゃくちゃ突っ張る。

これはまずい。

道路の脇、腰かけられるところで一回シューズを脱ぎ状態を確かめる。ゴリゴリに固い。固すぎる。軽くマッサージをしてシューズを履いた。少し窮屈に感じ始めていたので紐を少し緩めた。

このまだ4分の1も来ていない時点でこの痛みが出てきたときの絶望感をどう表現したらよいか分からない。まだ15kmだよ。ここ最近の練習では30km走ったって出たことのないようなところの痛み。これを背負ってあと40km走れんのかい。

歩きながら痛みの原因を考えていた。まずは練習不足。峠走は数回したけれども全然坂を登れるほどの足力がない。脚力がないところで遅いなりにも頑張って走ってしまって、普段とは違うようなところに過大な負荷がかかってしまったのか。次に考えたのが、シューズのフィッティングの問題。色違いのクラウドでフル走って足裏何ともなかったことを考えると、違うのはゴム紐か靴紐か。紐の締めが少しきつかったか。あとはテーピングがちょっと具合が悪かったか。足裏のテーピングはロング走の練習の時もしていたから少し慣れつつあったのだけれど、Tabioのレースソックスとのテーピングの感じが合わなかったのか。そもそもTabioのソックスにテーピングっぽい編みこみがあるのだからテーピングは必要なかったのか。いろいろと考えるが答えなんか見つからず痛みは徐々に強くなるばかり。

17km過ぎにまた足を止め、座れるところなどなかったが、側溝に足を入れシューズを脱いだ。

大会関係者の車に声をかけられる。

「大丈夫ですかー。」

「はい。少し休んでから行きます。」

全然大丈夫じゃない。

シューズを脱いで、今度はソックスも脱いで、圧迫感が強かったテーピングをはがした。マッサージをする。さっきに比べて、さらに押したときの痛みはさらに強まった。こんな感情の時にTabioの5本指ソックスはいただけない。

5本指の各々の指を上手くソックスの指袋にはめられない。

くやしさと焦りと絶望と。

重なり合って一つの袋に入ろうとする指を、力ずくで切り離し、袋にぶち込むにつけ、もう片方のTabioを側溝に叩きつけようかと思った。

Tabioのせいじゃないのに。

 

続く。