ウルトラマラソンに初めて触れた③【第26回チャレンジ磐梯吾妻スカイライン】浄土平エイド~ゴール

パワーフード、こづゆ。からの、、、。

浄土平エイド。AM9:45。

ようやく上りきった安堵感は大きいものがあった。一時はリタイアを決めたぐらいだから、ここまでこれた達成感はそこそこあった。が、あくまでそこそこである。やはり、最高の達成感はゴールしないと得られない。外は風が強く、気温もだいぶ下がってきていた。10℃切っていただろうか。とにかく、空いたお腹を満たしたい、ちょっと足を休ませたいと浄土平レストハウスのガレージみたいなところに開かれたエイドへ向かった。大きな区切りのポイントとなるエイドなので、ランナーたちがそれぞれに休憩をしている。

 

エイドに入ると、真っ先にボランティアさんから声がかかる。

「こづゆ、ありますよー」

皆さん、こづゆをご存じだろうか。

こづゆは干し貝柱で出汁をとり、豆麩(まめぶ)、人参、椎茸、里芋、銀杏、きくらげ、糸こんにゃくの7種類の具材を入れて薄味に仕立てた汁物料理で、福島県会津地方の郷土料理です。「にっぽんの郷土料理観光辞典」

 会津地方のソウルフード。当然頂きます。

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うまい。文句なしにうまい。

控えめのだし汁は胃にも優しく、ざくざく切られた具も食べやすい。そして何より体が温まる。完全なるパワーフード。ガレージ奥には椅子があって、みんな座っていたが、1脚だけぽつんと空いていた。近くに女性が立っていたので、女性をさしおいていい年の疲れ切ったおじさんがサクッと座るのもどうかと思ったが、ここは遠慮なく、すみませんと一言発し座らせてもらった。シューズの紐を緩める。

 

こづゆが沁みる。

梅干しのおにぎりも一つ。コンビニおにぎりだったけどうまかった。

5分ぐらいかけてゆっくり食した。

 

ぼちぼち行きますかなと立ち上がりボトルにスポーツドリンクを補充。補充中、オレンジもあったのでほおばる。きゅっとした酸味が気を引き締める。シューズの紐も軽く締め直す。

 

「ごちそうさまです。行ってきます。」

挨拶をしてコースに戻ろうとしたその時。

 

あ。

足、なんか大丈夫だけど。

え。

痛みがずいぶん和らいでいる。

おお、まじか。ほんとかよ。

 

なんか嬉しくて投下したIGストーリーの一枚。

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圏外だったのでタイムラグが生じだだろうが。

こづゆの奇跡である。

このエイドの休憩でかなり痛みが和らいだのだ!

 

走れる!でもWhy?

ちょっと小走りしても、さっきまでの痛みが完全とまでは行かないけれど、ほぼ無くなっていた。走れる嬉しさ、これでゴールまで行けるんじゃないかという希望の光にワクワクした。

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浄土平エイドありがとう!

少し走りだしてのエイドの去り際、他のランナーとボランティアさんの会話がさりげなく耳に入る。

ランナー「あとはずっと下りですよね?!」

ボラ「ちょっとだけ平らと上りがまだあります、、、。けどそれが終われば、、、。」

あ、まだ下らないのか、、、と落ち込むかと思いきや、もうそんなことよりも足が普通に着けることが嬉しくてたまらなかった。

吾妻小富士を背に、磐梯吾妻スカイライン会津側へと走り始める。走り始める!ボランティアさん言う通り少し平らな区間があり、上ったところで道路最高点。

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道路最高点に来たところでまた走れる喜びの最高点も叩きだす。

なぜ痛みが和らいだのだろう。

確かなことは分からないが、一つの仮説を下っている間に立てた。

足裏の痛みは長い上りの間、走り方、シューズ・ソックス・テーピングの相性、などの理由で筋肉が凝り固まってしまっていた。ひとつの攣っていたような状態。ソックス脱いで触った時もゴリゴリに突っ張っていたので。それで走れなくなり歩いたのだが、途中でつま先着地すると大丈夫なことに気付いたから、バランスが悪くはあったけれども、常につま先で着地することによってストレッチ効果があったのではないか。

 

ずっと辛い思いをして歩いていた区間、ストレッチをしていた説。

 

そしてエイドでゆっくりし、パワーフードで心も身体も温まったところで復活。

どうでしょうね。

 

山の洗礼第二弾とハッピータイム

最高到達点を過ぎ、いよいよあとはほぼ下りのみ。行くぜ。

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その前に、写真を見てお気づきだろうか。前のランナーが霧の中に消えようとしている。そう、磐梯吾妻スカイライン会津側は霧、小雨、低温のきつい天気に変わっていた。山を甘く見てはいけない。洗礼第二弾。

しかし、足の痛みを解放されたおじさんはそれよりも何よりも走れることが嬉しくて、楽しくてたまらない。いよいよ、本格的に下りに入ってからは、ガーミンを切っていたので詳しいペースは分からず体感だが、ピーク時は5分前半ぐらいだったと思う。下りにしてはたいして速くはないペースだが、スカイラインを終えるまで12,3人抜いて、一人も抜かれなかった。100m先は霧で前が見えないような状況もあったが、低レベルだけれどもゾーン的なところにいた。まさしくそこはハッピータイム。霧の中、誰にも見えていなかっただろうが、確実に笑っていた。

 

エイドのありがたさが特に身に沁みる

今までそれほどエイドの食べ物を食べたことはなかった。一番食べたのは昨年のさくらんぼ東根ハーフのさくらんぼとか、はが路でクラッシュしたあとのそばとかぐらい。今回のエイドでは大変お世話になったし、これほどエイドのありがたさを感じることは今までなかった。特に後半の始まりの区間の天気は前述の通りで最悪。それでも先に車を止めてエイドを開いていてくれる。後半はほぼ一人ぼっちで走っているので、エイドでたまにランナーたちと顔を合わせて、「寒いですねー、きついですねー」と声を掛け合うのも楽しかった。特に終盤になるにつれて、体のエネルギーが枯渇してきているのもあるのだろう、エイドが待ち遠しく、ちょっと豪華なエイドに止まると気分が高まった。スカイラインを走りきったところにあったエイドではオレンジとイチゴが美味しくて止まらなかった。あとのランナーのことを考えたらそんなに食べたらいかんのだけれども、それでも「好きなだけ食べなー」と声をかけてくれる。ありがたい。そして今回特にこれ生き返る!って思ったのが、あと10kmぐらいのエイドにあった黒砂糖。甘党の私にはもうたまらなくおいしかった。短い距離だとどうしてもタイムを縮めたいと思ってしまうから、こういうエイドはなかなか楽しめていなかったのだなあと改めて思った。

 

ボランティアの皆さん、本当にありがとうございました。

 

9時間の旅、完了

下りは、上りの分まで楽しく、一生懸命走った。

 スカイラインを抜け、奥土湯の温泉郷(ここのお湯も大好き)を走った。そこを抜けると徐々に天気も良くなりはじめ、土湯温泉までの旧道は新緑の森のトンネルの中、木々の緑の匂い、時折見せる木漏れ日、自分の息遣いを感じながら走った。あと残り4kmちょっとの最後のエイドには若いお姉さん方が数人いて、「おかえりなさーい」とランナーの姿が見えたところで、まだずっと先なのに大きく手を振り迎えてくれた。その頃はさすがに疲れていたけれど、おじさんはまだかっこつける気力は残っていたので、まだまだ行ける体で「行ってきまーす」とほどよい勢いのままエイドを去る。そして見えなくなったであろうところでグッとペースを落とした。

 

下りは写真も撮らず、辛くはあったけれども、純粋に楽しく走ることができた。時間を気にすることなく、ただただゴールを目指して。最後のエイドを過ぎると、4月に峠走をしたコースに。一度走ったコースはやはり安心感がある。もう少し、もう少し。ゴール制限時間まではまだまだ余裕がある。良かった。ゴールできそうだ。

 

ゴールのある四季の里に入った。天気も良かったので、大勢の家族が思い思いの休日を過ごしていた。その中を、クタクタになった、けれども最後は精一杯かっこつけて、おじさんがスピードを上げる。先にゴールしたランナーが所々拍手でエールをくれる。一般のお客さんは、、、なんか走ってるなあぐらいで応援してくれなかった。あと数十m、曲がったらゴールのところで、係員の方が〇〇さん来ましたーとメガホンでお迎え。

 

最後の直線、全力ダッシュ。

両手を上げてゴールした。

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ふう、よかったよかった。

 

ゴールはしたもののタイム掲示板とかはなかったし、まだ完走証が届いてないので正式なタイムは分からないが、後半は約35km(吾妻小富士1周がないからもうちょっと短いか)を4時間15分ぐらいで、エイド、トイレ休憩とかを抜くと、キロ6分後半ぐらいで帰ってこれたようだ。ゴールした後に取ってもらった写真付きで後日完走証がくるらしい。楽しみだ。

 

絶望の上りから一転、奇跡的な復活からのゴール。

初めてのウルトラマラソン完了。

長い時間走るということは、本当にいろんなことがあって、面白いもんだということが分かった。

 

やってみるとわかる。

やってみないとわからない。

そんな旅がこの大会にはあった。

 

あと少し、続く