【第1回日光100kmウルトラマラソン挑戦②】「なんて日だ!」

今大会は家族同行であった。

その理由は第一に娘たちに勇姿を見せるため。

第二に100km走った後に体がどうなるか分からないので送迎の保証。

第三に今後、自分自身のわがままを言うかもしれないマラソン生活に対する、家族の理解度、興味、関心度のアップ。

無論、第一の理由が一番比率が大きいのであるが、第三の理由もこれからランニングを続け、大会に参加していく中でとても重要な点になる。この大会に参加するにあたって、宿はどうするか、食事はどうするか、私が走っている間にどうするか。ツアーコンダクターをしなければならない。ちなみに、中学校の時の将来の夢はツアーコンダクター。いろんなところに行けるのが楽しそうだったから。それだけ。

つまり、このツアーを成功裏に終わらせることができたなら、「また来年も行く!」ってなって、来年もしエントリーするならば、そのハードルがグッと下がるのだ(フフフ)。

失敗は許されない。

 

大会前日、順調に鬼怒川に入る。

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予想より早く着けたので、前日受付は宿のチェックインを済ませてから行くことにした。娘たちはとりわけホテルやら旅館などに宿泊することが大好きだから、早く宿に着くに越したことはない。今回の宿はエントリー前に押えておいた。今回のエントリー費はかなり高いため、その他の部分ではぐっと抑えたいという思いがあった。じゃらんでできるだけ安くて良さそうなところを探す。そして、素泊まりではあるが、まあそれなりの宿をみつけたと思い、予約した。

宿に到着。

外観的には、まあ若干年数は経っていそうではあるが、昔からありそうなホテル風情。普通だ。娘たちは我先にと館内へ突入する。

館内へ入ると正面は全面ガラス張りで、鬼怒川渓谷を望むナイスビュー。

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娘たちもこの景色にはちょっとテンションが上がったよう。よしよし。

 

鬼怒川。

川沿いに立つ温泉旅館群。

木々の緑。

橋。

 

一見したところ、ごく普通の風景に見えるこの写真。

しかしだ。

しかし。

今思うとこの写真は何かの暗示だったのかとも思える。少し前に亡くなったばあちゃんが「あの橋見ときな」って言ってくれてたのかもしれない。ここに写っている緑の橋。この橋が翌日、私を絶望の淵に追い込むことになることなど全く知る由もなかった。

 

それはさておき15時過ぎ、チェックイン開始時間は過ぎているが始まったばかりなのか、ホールは少し薄暗かった。娘たちの声を聞いてか、年の頃は50半ばの従業員の方がフロントに出てきた。

私「あ、こんにちは。本日宿泊するものです。チェックインお願いします。」

従業員「こんにちは、お疲れ様です。チェックインですね、今お調べします、、、。明日、マラソン大会に出られるんですか?」

私「はい。そうなんです。」

従「そうですかー。すごいですねー。じゃあ明日はランラン気分でがんばってくださいね。」

私「え?」

従「走るだけに、ルンルンじゃなくてランラン(RUNRUN)ね。」

私「ああ、がんばります(笑)(ダジャレか、、、。)」

予約の確認が取れた。

従「はい、お待ちしておりました。ではこちらがお部屋の鍵(鍵に414号室と書いてある)になります。あ、明日のマラソンきっと良いことがありますよー。良いお部屋になりましたから。良いよ(414)って言ってね。」

私「あ、ああ、、、。ありがとうございます(笑)(ダジャレか、、、。)」

館内の説明が始まる。

ふと、従業員さんが、さきほどのホールからの眺めにはしゃいでいる娘たちに近寄っていき、

従「お嬢ちゃんたち、綺麗でしょー。眺めが。でも気をつけてね。川に落ちたら、お嬢ちゃんたちでも、ぼっちゃーんになっちゃうから。」

私、三人娘「???」

従「男の子だったら、川に落ちてもそのまま、ぼっちゃーん(坊ちゃん)なんだけどね。おばあさんだったら、ばっちゃーんってなっちゃうから。」

私「ああ、ねえ、、、。(愛想笑)」

 長女はそのダジャレに気づいたようだが、下の二人は「何?何?」と私に訴えかけてくる。仕方なく、ダジャレの説明をした。ここで私は気づいた。この人はダジャレおじさんだ。ダジャレをこよなく愛しているのは、ダジャレの後のドヤ顔が物語っている。私はちょっと警戒した。

 ちょっと分かりにくかった、すべったと思ったのか。ダジャレのグレード下げてくる。

従「(斧を持った人形を指差して)この斧でおじさんを殴ってはダメよー。オーノー!ってね(説明するまでもないが、OH,NO!と斧)。」

私「ああ、ねえ(愛想笑)」

上二人の娘「ふふふ」

これは簡単だ。

従「(紀元前の人が描かれているエジプトっぽい布を指差して)これエジプトのカイロで買った本物の布ね。エジプトの都市カイロで買ったの。いい街だったなあ。いつかカイロー(帰ろう)。」

私「、、、(苦笑)」

二女「かいろって何?」

私「いいから、後で教えるから(小声で)」

その後も矢継ぎ早にくり出されるダジャレの雨あられ。もう耐えられんと部屋のある階へと向かうエレベーターへ、愛想笑いのままそそくさと潜り込んだ。しかし、それはこれから起こる悲劇の序章に過ぎなかった。

 

エレベーターに乗り込む。

私「なんかすごかったな、ダジャレ。」

長女「うん、、、。うっ!!」

私「ん、どうした?」

 

家族全員「くさっっっ!」

 

小さい古びたエレベーター内が異常にかび臭い。娘三人、三女までが鼻を押えている。おいおいおい。換気扇掃除してくれよ。明らかに空気が、、、。みんなでシンクロしてんのかよって状態で、部屋の階に着くと我先にとエレベーターを脱出する。

私「なんか、すごい臭いだったな、、、。ん?!ああ、ここもか、、、。」

エレベーターを降りたら、たばこの臭いやら、かびの臭いやらでこれまたくさい。もうこの時点でテンションがぐっと下がった一家。頼むから部屋だけは、部屋だけは勘弁してくれと祈りながら部屋へ。

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臭くない(当たり前なのだが)。良かった。とりあえず良かった。

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なんか部屋の中に物置あるけど。まあいいか。

部屋の臭いは大丈夫だった。布団は?素泊まりなので布団は自分で敷く。布団はギリOK。ていうか、ギリってなんだよって話だが。

なんだか雲行きが怪しくなってきたのだが、さきほどフロントで私が忘れた荷物を車に取りに行ってた時に、なにやら卓球場があるということを教えてもらっていたらしい。長女は卓球クラブにも入っているのですぐやりたいみたいだ。このままではだいぶマイナスポイントだ。とりあえず前日受付を済ませてくるから、帰ってきたらすぐ卓球をする約束をした。

急いで部屋を出る。

くせえ。

 

車で約20分ぐらい。会場等到着。

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わりとこじんまりした感じだ。

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トラブルなく受付をする。

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ブースは少ないが見て回る。トイレも確認するが、数が少なさそう、、、。これは翌日不安的中。本当は開会式でコース攻略のポイント説明などがあるらしく、聞きたかったのだが、さきほどのマイナスポイントを取り返すべく、卓球をしないといけない。早く宿へ戻る。

 

宿へ戻ると早速フロントへ向かった。あいつはいなかった。女性従業員さんに卓球用具を借り、卓球場へ。

おそるおそる卓球場へ入る。

ここもくさい。

しかもなぜかドラムセットがある。叩かないでください。他のお客さんから怒られますと釘をさされた。もうなんか、Xのヨシキばりのドラムをやってやりたい気分だった。

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卓球開始。

長女がわりとできるのに驚いた。成長したもんだ。

そして私も、何年ぶり何十年ぶりかという卓球にも関わらず、ちょっとだけ形になっていた。これ、なんでかなあと思って考えてみると、リオオリンピックで卓球勢が大活躍し、ここ最近でも卓球のニュースが多かったので、卓球のフォームがイメージできたからなんではないかと思う。イメージは大事だ。ランニングフォームも速い選手のフォームをじっくり見て、頭にイメージさせるのは結構効果があるのかもしれない。

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三女初卓球。球は予想もできない方向へ。

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妻VS長女。本気の対決。なんか二人ともポーズがおかしい。

卓球できて良かった。これがなければずっと部屋に引きこもるところだった。

 

お風呂に入って、どれご飯をたべるかと考え始める。もともと素泊まりで、部屋で出前が取れると聞いていたので、それでいいかと思っていた。部屋にある案内に乗っているメニューで選び、お店に電話する。

が、電話に出ない。

3度電話するも出ない。忙しいのか。

もう一つお店のメニューがあったのでそちらへ。

そちらは速攻出た。しかし、明らかに忙しそう。今6時半。夕飯時。

私「ホテル〇〇の部屋なんですが、出前を、、、。」

そば屋「あ、出前やってないんです、、、。」

なんなんだ。ならメニュー載せるなよ。

出前はあきらめて外に出て食べることにした。温泉街の中心より若干ではあるが離れていたので、食堂まで少し歩く。私としては前日にあまり歩きたくないし、早く帰って準備もしたい。とりあえず宿から一番近い食堂へ入ったのだが、、、。

これがまたなんともはや。

食堂に入ったら、人のよさそうなおじさんが席へ案内してくれる。お店の雰囲気は、まあ田舎の小さな町の昔からある食堂の雰囲気。外から見てお客さんもいたし、大丈夫だろうと入ったのだが、中はやけに庶民的だ。

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 セルフのペットボトルのウーロン茶と子どもがいるからとバナナをサービスでくれた。メニューが油でべとべとする。こちらに注文を書いてくれませんかとエコなメモ帳を渡される。こんなサービス(?)やシステムは初めてと長女不安がる。奥の座敷のもうすでに酔っている常連の話し声がやけにうるさい。もうなんか美味しそうなものが出てくる雰囲気がない。だめだ。

娘たちのざるそば、ざるうどんはまあ普通のようだった。二女は腹が減っていたらしくがっついていたが、長女は店の雰囲気、メニューのべとべと感にひいてしまってあまり食欲がわかないようだった。私達夫婦は五目そばを頼んだ。お腹は空いている。

やたら時間がかかって五目そばがきた。

正直目を疑った。

今までに見たことがない五目そばだった。

分厚い生姜焼き用だろうというような豚肉、かまぼこ、やけに大きいかにかま、生たまごをお湯で茹でただけのもの、もやし、キャベツ?はくさい?それがなんかアクがふわーとそこかしこに浮いている透明なスープに入っているのだ。塩味のようだ。私の知識不足だったら申し訳ないのだが、五目そばって基本醤油じゃなかったのか。塩味があるにしてもこれはなんだろうか。今まで料理をしたことがなかった、単身赴任したての中年おじさんが作ったような五目そばだ。妻はこれはだめ、完食できないと途中で箸を置いた。これほど不味い五目そばははじめてだ。私は普段温厚である。ある程度貧乏生活も経験しているから、ごくごく庶民的な雰囲気には免疫があるほうだとも思う。そんなにグルメ舌ではないから、ぼちぼちのものであれば「うまいうまい」と食べることができる。それでも、これには少々憤りを感じた。そういうレベルの料理だ。当然、娘たちのテンションだだ下がり。

窓全開で虫は飛んでくるはで大騒ぎ。一刻も早く店を出る。

私「ごめんね、、、。早く食べたくてたれか(手を抜く、適当にする)したわ、、、。」

明らかにお店の選択を間違った。

重い空気が流れたまま、ホテルに入る。

フロントではあのダジャレ従業員。

従「おかえりなさい。ご飯食べてきたんですか~?」

私「あ、はい、、、。(今はダジャレの空気じゃない、やめてくれ)」

従「そばやさん?」

妻「あ、いえ、、、。すぐそこの食堂で、、、。」

従「ああ、〇〇さんかあ。ラーメン食べました?」

私「あ、ええ、、、。(なんか、やっちゃったね感を感じる)」

従「昔ながらのラーメンって感じだったでしょー。」

私「ええ、まあ、、、。(食べたことないだろ、五目そば)」

従「あ、クリスチャンはねえ、ラーメン好きなんですよー。」

私「?」

従「ラーメン(アーメン)って言ってね(笑)」

私「・・・。(イラっ)」

妻「フフフ(表情は無。声のみ)」

さらに重い空気になりそうだったので、くさいエレベーターに足早に乗り込んだ。

 

 部屋に帰ってから多少カルチャーショックだったのか、長女が凹んでいた。申し訳ない。とはいえ、もう済んでしまったことはしょうがない。みんなで買いだめしていたお菓子を美味しく食べあった。私はすぐに明日の準備。ジェルをソフトフラスクにつめ、冷蔵庫に入れようとした時、

 

私「あ、冷蔵庫電源入ってないよ、これ」

冷蔵庫の扉を開いたその奥に、電源ONのツマミがあり、回す。

冷蔵庫「ゴー、ゴー、ゴー」

妻「ん、何この音??」

私「ああっー、この冷蔵庫うるさっ!」

 

これこそ、正真正銘の「なんて日だっ!!」てやつだ。

宿代をケチってしまったばっかりに、みんなに悲しい思いをさせてしまった。私だけならまだ良かったのだが、こんなイメージで来年は行かないとか言われたら、、、。少したてば笑い話になるか。いや、そう願う。

 

もう、缶チューハイを一缶だけ飲んで、今日のことは忘れることにした。

 

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